テレビ朝日ニュースステーション報道

はじめに:報道ステーションが報じた「ケアマネジャー不足」の深刻な実態

日本が直面する超高齢社会において、介護保険制度の司令塔ともいえる「ケアマネジャー(介護支援専門員)」。しかし現在、その深刻な人材不足が全国各地で社会問題化しています。2026年7月9日に放送されたテレビ朝日系「報道ステーション」の特集では、ケアマネジャー不足によって介護サービスすら受けられない「ケアプラン難民」の悲惨な実態が浮き彫りとなりました。

この記事では、番組の報道内容をもとに、ケアマネ不足の現状と背景にある構造的な課題を詳しく紐解いていきます。

ケアマネが見つからない!要介護者と家族を襲う悲劇

番組内で紹介されたあるケースは、現在の介護現場の限界を象徴するものでした。介護が必要になった母親のために、家族が自ら市役所でケアマネジャーの事業所一覧表をもらい、片っ端から電話をかけて担当者を探す事態に陥ったのです。

ようやく担当のケアマネジャーが見つかるまでに要した期間は、なんと3カ月。その間に適切な支援を受けられなかった母親は足腰が急激に弱り、自力で歩けなくなってしまったといいます。

介護保険サービス(デイサービスや訪問介護など)を利用するためには、原則として専門職であるケアマネジャーが作成する「ケアプラン(介護サービス計画)」が不可欠です。つまり、ケアマネジャーが見つからなければ、どれだけ本人の状態が悪化しようと公的な支援をスムーズに受けられないのです。この「ケアプランが作れない」という問題は、地方の過疎地だけでなく、関東圏などの都市部でも深刻化しています。

なぜ不足しているのか?背景にある「3つの要因」

番組に出演した国際医療福祉大学の石山麗子教授は、ケアマネジャー不足の根本的な背景として、以下の3つの大きな課題を指摘しています。

1. 人材の高齢化と高すぎる資格ハードル

現在、現場で活躍しているケアマネジャーの主力年齢層は50代から60代に集中しています。彼らが次々と定年退職の時期を迎えている一方で、新たにケアマネジャーを志す若手が圧倒的に足りていません。

その最大の障壁が、厳格すぎる受験資格です。ケアマネジャーの試験を受けるためには、介護福祉士や看護師などの国家資格(保健・医療・福祉関連)を持った上で、「5年以上かつ900日以上」の実務経験が求められます。さらに、合格率10〜20%という難関試験を突破した後も、多大な時間と費用をかけて実務研修を受けなければなりません。資格取得までの道のりが長すぎることが、新規参入を大きく阻んでいます。

2. 精神的・物理的な負担と安全面への懸念

ケアマネジャーの主要な業務は、利用者の自宅を訪問し、生活環境や課題を直接確認することです。しかしこれは、「密室という見えない空間に、たった一人で踏み込まなければならない」という大きなリスクを伴います。

利用者やその家族から理不尽なクレームを受けたり、ハラスメント被害に遭ったりすることも少なくありません。一人で家庭内の複雑な事情に向き合う精神的・物理的な負担は計り知れず、現場の疲弊を招いています。

3. 見合わない報酬と「シャドウワーク」の常態化

責任の重さに対して、給与などの待遇面が見合っていないことも大きな要因です。担当する利用者の件数が増えても、事務作業に追われるばかりで給料の大幅なアップにはつながりにくい構造があります。

さらに深刻なのが、制度上は評価(報酬化)されない「シャドウワーク(無償労働)」の常態化です。急な体調不良やトラブルへの対応、医療機関・行政との度重なる調整、膨大な書類作成など、目に見えない業務に時間を奪われ、「やりがい」だけでは働き続けることが困難な状況に追い込まれています。

「何でも屋さん」ではない!求められる社会の意識改革

番組の終盤で強く訴えかけられたのは、ケアマネジャーに対する社会全体の「誤解」を解くことの重要性でした。利用者やその家族、さらには行政や医療関係者の中にも、「ケアマネジャーは介護のことであれば何でもしてくれる人」と勘違いしているケースが後を絶ちません。

しかし、ケアマネジャーはあくまで最適な介護サービスを調整し、自立支援に向けたケアプランを作成する「専門職」です。生活の雑用や制度外の要求に応える「何でも屋さん」ではありません。こうした認識のズレが、ケアマネジャーを精神的に追い詰め、離職へと繋がる一因となっています。

まとめ:介護保険制度の崩壊を防ぐために

「誰かの暮らしを支える仕事なのに、自分の暮らしやキャリアを犠牲にしなければ続けられない」。これは番組に関連してSNS等で上がった、ある現場スタッフの切実な声です。

国も処遇改善や業務のICT化などに向けた対策を講じ始めてはいますが、抜本的な不足解消には至っていません。超高齢社会を支える介護保険制度を今後も維持していくためには、資格要件の柔軟な見直しや報酬体系の抜本的な改善といった国の制度改革が不可欠です。それに加えて、私たち一人ひとりがケアマネジャーの専門性を正しく理解し、敬意を持って接していくという社会的な意識改革こそが、今まさに求められています。

📞 電話をかける ✉️ 見学を申し込む